ボーダーコリー
ここ数年、公表されているボーダーコリーの登録頭数は安定して来た様に見受けられます。犬と共にある生活が定着して来たとはいえ、超活動的な中型犬が十分に満足する運動時間・空間をあたえる事は難しいはずです。ボーダーコリーが日本にしっかりと定住するようになるには、いったい何が必要なのでしょうか。
ボーダーコリーの魅力
なんといっても賢さと運動能力の高さです。普段の生活の中で次に何を指示されるのか、あるいは次に何を行うのか…先を読んで次の場面に備える行動が多く見受けられます。
この様な洞察力の高さが、秀でた運動能力へとつながります。早く走る、高く飛ぶ、小回りの利く動き、持久力がある、体力の回復が早い… などなど。これら一つ一つは、他犬種でも勝っているものがたくさん存在しています。しかし、ボーダーコリーはこれらの能力のバランスが良いのです。
そして、先を読む力が兼ね備わっているからこそ、これらの能力を犬自身が使いこなす事ができ、その結果、静と動を調和させたメリハリのある動きが維持できるわけです。
しかし、魅力の影には問題行動を生んでしまう力が潜んでいるため、しっかりとしたしつけが必要になってきます。
ボーダーコリーのしつけ
よく聞く問題行動とその解決方法
①:引っ張られて歩きづらい
②:動く物を追いかける。または狙ってしまう。
③:無駄吠えをする。
④:飼い主に対して、咬む、唸る。
⑤:呼んでも来ない。
⑥:『待て』が出来ない。
この中でボーダーコリーならではの問題行動は、実は②:動く物を追いかける、または狙ってしまう・・・だけなのです。この場合の動く物の対象は、車・バイク・自転車・人・犬・猫・ボールなどが多いですが、他にも蛇口から出ている水、風に舞う落ち葉、などにも興味を惹かれる場合があります。
対象が何であれ、この事が原因で『来い』『待て』などの指示に従わない様では困ってしまいます。どんな時にでも、指示に従う状態に変身させなければなりません。
しかし①~⑥の行動は、いずれも直接的なしつけを繰り返すだけでは矯正する事は出来ません。むしろ日頃、次の様な事が必要になります
・運動不足を解消させる
・アイコンタクトをとる
・触る
・褒める
・叱る
などなど、一見当たりまえのように思える事が、愛犬との主従関係をより確かなものにし、完成度の高いしつけへの第一歩となります。
これらはボーダーコリーだからこそ行う事ではなく、飼う犬すべてに必要な事です。
しつけを成功させるためには、これらの使い方のタイミング、組み合わせ、メリハリなどが大きく関わってきます。 また、ひとつの行為に対して叱ったり叱らなかったりでは、犬の信頼を勝ち得ることは出来ません。犬との間に交わされる約束事は明快でなければなりません、このルールは人も守らなくてはいけません。
さらに、しつけを始める時期も大切です。
『④:飼い主に対して、咬む、唸る』の問題行動は、体の一部を触られる事を嫌がる。餌を食べている時に、器に手を近づけると唸る。といった場面に顕著に現れます。
この様な犬は多くの場合、子犬の頃の可愛さから我慢をさせられず、好きな事ばかりさせてしまい、気がついた頃には、従わせられない状態に陥っています。
こうなると、犬自身は今まで好き勝手ができる生活を送っていたわけですから、突然我慢を強いられても、それを受け入れ難い状態になっているのです。そして、ますます扱いづらくなり、犬の勝手な行動を許すようになって行きます。成長に従い本能も強く現れます。ボーダーコリーで言えば、“動く物を追いかける、または狙ってしまう”という本来は牧羊犬としては優れているとされる能力さえも問題行動として扱われてしまうのです。
まずは運動不足の解消です。運動不足が続くと体を動かしたい欲求が強くなり指示に従い難くい状況を作り出してしまいます。初歩の段階ではこのストレスを取り除く必要があります。
しかしボーダーコリーは成長に伴い身体を満足させるだけでは、新たな問題行動へとつながる落とし穴があるのです。
そこで、物を投げて、咥えて持って来させる動作を繰り返す事は、この条件を満たしているかのように思えます。しかし、ボーダーコリーは、単調な繰り返しだけを続けると、思わぬ問題行動を引き起こします。前述の通りボーダーコリーの“先を読む”という能力が災いして、楽しい事を早く行なおうとするために、『待て』が出来難い状況を作ってしまいます。そして、その結果、興奮しやすい犬へと変わっていってしまうのです。
近年、家庭で飼われているボーダーコリーは、ほとんどのものが現役の牧羊犬をベースにした交配で始まり、家庭犬として系統を積み重ねて来ています。とは言え、他の犬種に比べるとまだまだ改良目的の本能が強く現れます。
本来ならば、羊を誘導することに活用されるべき本能=羊の群れをまわる、突っ込む、観察する、狙いをつける、追いかける、といった生まれながらに備わった能力も、マイナスに作用し持て余すとなると家庭犬として不適応なボーダーということになりかねません。
これらを矯正するには、彼らの並外れた体力と頭脳をバランスよく使わせることが何よりも大切なのです。そして興奮する環境でいかに我慢ができるか、という忍耐力をつけさせる必要があります。 そのために日ごろのトレーニングでは、単調な繰り返しをやめ、その中に『待て』や『来い』を加え、動で興奮させ、静で落ち着かせる場面を作り出します。この事により犬の精神面のコントロールも出来るようになります。また、次の指示を読まれない様にするために犬に与える指示はパターン化しない事。これによりハンドラーを意識して、指示を待てる犬へと変わって行きます。